良品学習AIの導入、待って!注意点をどこよりも深く解説
この記事でわかること
良品学習の導入を検討されている方、ちょっとお待ちください! こちらの記事を見られる方は、良品学習に期待している方もいれば、良品学習は精度がでないというイメージを持った(あるいはメーカーに言われた)方が多くいらっしゃいます。精度高い運用のためには、簡潔に言うとどこまで微細な欠陥が検出できるのかです。導入後の後悔をしないために、慎重に検証してください。良品学習とは何か?画像処理とは何が違うのか?検索するとたくさんの記事が出てきますが、殆ど差は感じられないかもしれません。ここでは、特に「これから外観検査のAIを導入する方」だけでなく、「AIで精度が出なくて困っている方」に向けて、選定時に気を付けるべきポイントを、業界の実情を踏まえつつ一歩踏み込んで解説します。
なお、最新技術として、当社では良品学習に加え、業界初の全く学習が必要がない「ゼロ学習異常検知AI」も展開しています。ご興味がある方は、下記のリンクをご覧ください。
良品学習AIとは
AIとはそもそも何か
AI(人工知能)というと、技術的にはディープラーニングを指すことがほとんどです。ディープラーニングは、人間の神経回路を模擬した構造を持ち、ChatGPTをはじめとする言語処理や、自動運転の画像認識技術など、今や生活に欠かせない技術となっています。外観検査では特に、画像認識分野のディープラーニング技術が活用されています。
例えば、猫や犬などの一般的なものを認識するAIがあります。数多くの画像から「猫」に共通する特徴や「犬」に共通する特徴をデータから学習していきます。このプロセスを「学習」と呼びます。
人間でも猫を「猫」と認識できる理由を定義してくださいと言われたら、なかなか答えにくいと思います。しかし、なんとなくそれが可能です。一方で、画像から猫と犬を区別するアルゴリズムを作るとなると非常に難しいでしょう。このような複雑な判断を可能にするために、人間の神経回路を模倣して作られた技術がディープラーニングです。
(詳細は今回の記事では割愛しますが)ディープラーニング技術は、人間の神経回路を模倣した構造であり、データ(入力)とそれに対する正解(出力)のペアを学習させることで、複雑な処理プロセス(つまり入力と出力の関係性)をデータから獲得することができます。

外観検査におけるAIの種類
外観検査ベンダーがよく触れるAIの種類について説明します。
・教師あり学習:不良品学習とも言われます。不良データをAIに教えるアプローチです。不良をしっかり学習させることで高精度な分類が可能になり、不良種を識別することもできます。しかし、不良が多くない現場では、データ収集が大変であり、新しい不良に対応できないという課題があります。
・教師なし学習:良品学習や異常検知、アノマリー検出と呼ばれる場合もあります。良品を学習し、それ以外を検出するアプローチです。日常的に良品が集まることを考えるとデータ収集が容易で、未知の不良にも対応可能なため、教師なし学習(良品学習)を採用するケースが増えています。
学習方式 | 定義 | 長所 | 短所 |
---|---|---|---|
教師あり学習 (不良品学習) |
不良データをAIに教えるアプローチ | 十分なデータがあれば高精度な分類が可能 | 不良データ収集が困難。新しい不良モードには未対応 |
教師なし学習 (良品学習) |
良品を学習し、良品と異なるものを検出 | 良品データは豊富で学習しやすい。未知の不良に対応可能 | 不良の分類は困難。過検出が発生しやすい |
画像処理とAIは何が違うのか?
一見、良品学習AIは不良品学習AIに比べて魅力的な側面があるように見えます。 では、従来からある画像処理とAIは何が違うのでしょうか?今回は良品学習のアプローチに近い画像処理の手法に着目してみていきましょう。
差分検知(画像処理)
画像処理にお詳しい方なら、類似する手法として差分検知が思いつくかもしれません。
マスター画像を登録し、検査対象の画像との差分を見る方法です。一般的には、位置補正をしてから差分を計算します。この差分画像で白く表示される部分が異常として検出された部分を示し、通常、この部位を異常として扱います。
差分検知(画像処理)の欠点
例えば、チップの破損不良が本来の異常箇所である場合でも、それ以外の部分が異常として過剰に検出されることがあります。これは「過検出」と呼ばれます。
なぜ過検出が起きるかというと、製品には必ずばらつきがあるためです。
製品の良品を並べて比較すると、以下のようなばらつきがあることがわかります:
登録画像との差分では、このばらつきが異常として検出されることが避けられません。そのため、ばらつきが小さい製品ほど、画像処理による差分検知が効果を発揮しやすいのです。

良品学習AIは何ができるのか
では、良品学習AIは過検出の問題に対する有効な解決策となるのでしょうか?結論から言うと、通常の良品学習AIではその答えは「半分YES」といえます。
「良品との比較」で人間にできて、画像処理にできないことは何でしょうか。人間は、生産される製品を観察しながら良品の範囲(ばらつきの分布)を把握し、「これは違う」と直感的に判断できます。一方、画像処理のマスタ画像との差分検知では、全く同じ画像は存在しないため、必ずしも正確な判断ができません。
良品学習AIが目指しているのは、人間が理解するようなばらつきの分布を学習し、その分布から逸脱したものを異常として判断することです。これにより、過検出を抑えつつ異常を検出することが可能になります。

通常の良品学習AIが陥る問題
分布の学習精度の差
良品学習AIは魅力的ですが、多くの製品で実際に起きている課題があります。それは、良品が持つばらつきの分布を正確に学習できないことです。
良品のばらつきは非常に複雑であり、画像内で無限に近い組み合わせが存在します。一般的なアプローチでは、原理的にこのばらつきの分布を正確に学習することが難しい場合があります。そのため、現実では「数万枚の良品データを必要とする」「過検出が多い」といった問題が発生しがちです。
これは、例えるならば、「日本人の顔を見れば日本人とわかる能力」を持つ人間に対して、「実際に見たことのある日本人の顔に近いものしか日本人と認識できない」AIの状態に似ています。問題は良品学習そのものではなく、アルゴリズムの限界や適用技術の選択ミスに起因していることが多いです。
市場には輸入ソフトの流用が多く、製品ごとに異なるように見えても、実は同じAIアルゴリズムを使っているケースが少なくありません。この点を考慮し、選定時には慎重な検討が必要です。

ヒートマップの精度差
不良位置を示すヒートマップにも、実は大きな精度差があります。以下の3種類が一般的です:
・1.分類:画像を入力し、異常か否かのみを出力する方式。研究分野では使われますが、製品化は少ないです。
・2.半セグメンテーション:おおまかな位置を図示する方式で、多くの製品が採用していますが、厳密な領域指定はできません。
・3.セグメンテーション:異常領域をピクセルレベルで正確に指定する方式。不良の形状や大きさを正確に把握できるため、最も有用です。
当社では、画像の1/1000サイズ、2〜3ピクセルの微細欠陥を検出できる精度を持つセグメンテーション方式を採用しています。

当社AIが解決するもの
高いばらつき認識力
これまでの話をまとめると、過検出を抑えるには、ばらつきを効率的に把握する能力が良品学習AIに最も求められる性能です。
当社製品の特徴
当社では、国産AI企業として培った開発力を活かし、学習時のばらつきシミュレーション技術を用いて上述の課題を克服しています。以下の特徴が評価され、さまざまな製品との比較でお選びいただいています:
良品学習AIの導入をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
