ノンプログラマーが生成AIで簡単なアプリを作ってみて気づいたこと~AI時代の“作る力”より“考える力”の大切さ~
この記事でわかること
以下の4つの観点で「ノンプログラマーがAIを使ってプログラムを作って得られた気付き」として、“AI時代に本当に必要な力”について記載します。
- なぜノンプログラマーの社員が社内用ソフトウェアを作るにいたったのか
- 開発の流れと気を付けるべきポイント
- 実際にやってみて感じたことや注意点
- OUEN株式会社が考えるAIとの向き合い方
課題への着目
きっかけは、ある日お客様向けの資料を社内で作っている時の何気ない一言でした。
「画像のトリミングって、地味に面倒だよね。」
当社は外観検査システムの提案をしている以上、どうしても業務上で画像データのハンドリングが多い業務特性があります。
全体表示のままだと見えない欠陥を資料上でわかりやすくするために、トリミングや拡大などの作業が一般的な資料作成に比べて多いのです。
数枚の画像から1か所だけをトリミングする程度であればよいのですが、1枚の画像の中から複数枚をトリミングし、サイズを調整して配置する作業を数枚〜10枚以上の画像に対して行うこともあります。
そうなると、毎回かなりの時間を要します。そしてこの業務は、今後も続く業務です。
「じゃあ、簡単なソフトを作って効率化できないだろうか?」
そんな発想から、ノンプログラマーの社員が生成AIを使ってアプリ開発に挑戦することになりました。
開発者のプログラミングスキルはほぼ初心者。
ただし、以前「Gemini CLIを使ってみよう」という思いからVS Codeの環境は整っていたこと、日常的にChatGPTを使って思考整理をしていた経験がありました。
そんなプログラミング初心者が今回は「画像トリミング効率化ツール」に挑戦してみようと、エージェント型AI “Gemini CLI” をVS Code上で動作させ、アプリを作成することにしました。
大まかな作業手順と気を付けるべきポイント
1. 仕様を明確にする
最初に取り組んだのは、仕様の明確化です。
「今の業務のどこに時間がかかっているのか」
「ソフトウェアでどの作業が自動化できるのか」
「果たして、本当に作る価値があるのか」
このあたりを整理したうえで、必要な機能や動作、そしてレイアウトをテキストでまとめました。
どの言語を使うかは何が最適なのかわからなかったため、特に指示はせずAIに任せることにしました。
2. AIに仕様を伝え、試作する
次に、その仕様をGemini CLIに入力。
AIが提案するコードや質問内容を確認しながら、少しずつアプリを形にしていきます。
不足している部分や、実際に使ってみて改善すべき点は都度修正。
まるでAIとペア開発をしているような感覚でした。
3. 改善を取捨選択する
ここで気づいたのは、「改善に終わりはない」ということです。
ソフトウェアとして完成が見えてくると、「ここの色はこうした方がかっこいいな」「スクロールバーを追加したい」といった気付きが次々に出てきます。
ただ、それを追いかけ始めるといつまでも完成しません。
“本当に必要な改善”と“やらなくてもよい改善”を切り分ける力が重要だと感じました。
最終的に、アプリの作成にかかった時間はおよそ5時間。
しかし、このアプリを使うことで、1回の資料作成あたり約30分の時短が可能になりました。
10回使えば“開発時間の元が取れる”計算です。
やってみて感じたこと
生成AIを使うことで、これまで専門知識が必要だった「プログラミング」という領域が、一気に身近になったと感じました。
同時に、AIを“使いこなす”ためには、目的を明確にする力=考える力が何より大切だという気づきも得ました。
AIがコードを生成してくれる時代だからこそ、「何を作りたいのか」「どんな課題を解決したいのか」を自分で定義できる人が求められる。
まさにそんな実感を得られる経験でした。
UI改善の誘惑と、冷静な判断の大切さ
前述の通り、仕上がったソフトウェアを見ると細かなUIの修正をしたくなります。
ですが、この点は注意が必要です。ユーザーが使う上で、その変更は本当に時間をかけるべき変更なのか、それとも自分のこだわりなのかを冷静に判断する必要があります。
例えば、今回の場合トリミングする範囲をマウスで調整できるように設定しましたが、最初に設定したトリミング範囲をアクティブにする領域が狭すぎて、操作にストレスを感じる状態でした。
こういった“使い勝手”に関する部分は改善した方が良いでしょう。
一方で、「このボタン類はウィンドウから独立して動かせた方がそれっぽい」といった“見た目のこだわり”は、必ずしも効率化につながりません。
「その機能追加は、使用感の向上に本当に寄与するのか?」
この視点を持つことが、AI開発を活用する上でも極めて重要だと感じました。
当社の考え方
AIの進化によって、私たちはこれまでよりも自由に、スピーディーに“ものづくり”ができるようになりました。
しかし、これからの時代に本当に重要なのは、「どう作るか」よりも「何のために作るか」「どんな設計思想を持つか」だと考えています。
AIによって一部の仕事が自動化されるのは事実です。
ですが、ソフトウェア開発にしてもAI活用にしても、最終的に“何を目的にどう活用するか”を決めるのは人間です。
そしてその領域こそが、人の創造性を最大限に活かせる部分だと思います。
OUEN株式会社では、生産性を最大化するために、従来の当たり前を見直し、「立ち止まって効率化する」文化を大切にしています。
AIを単なるツールではなく、“人の創造力を支える相棒”として活かす。
そんな企業であり続けたいと考えています。
まとめ
生成AIの登場で、プログラミングや自動化は特別なスキルではなくなりつつあります。
だからこそ今後は、“考える力”や“課題を見つける力”が、より価値のあるスキルになるでしょう。
現場で感じた違和感をそのままにせず、AIの力で小さく形にしてみる。
その小さな一歩一歩の積み重ねが、OUENの考える“人の創造力を解き放つ”ための前進につながるのです。
OUENはこれからも、AIで人の創造力を解き放ち、現場から生まれる気づきを形にしていきます。

