ノーコードで外観検査を組み、学習まで回す ーInspection Designerの設計思想ー

外観検査ソフトを「ノーコードで組めます」と言うとき、多くの場合それは検査フローを画面上でつなげられることを指しています。ただ、現場で検査を立ち上げてから運用に乗せるまでを考えると、それだけでは足りません。
フローが組めても、学習データを作る工程が別のソフトで、評価がまた別のソフトなら、立ち上げのたびに3つのソフトを行き来することになります。この行き来が、実際には最も時間を食います。
Inspection Designer は、検査フローの構築・学習データの作成・学習と評価の3つを1つのソフトウェアの中に収めています。この記事では、それぞれが何をどこまでやってくれるのかを書きます。
検査フローは「並列で動く」ことが前提
検査フローは、処理のモジュールを順につないで組み立てます。用意しているモジュールは次のとおりです。
- 撮像 — 産業用カメラに対応。連続撮像モードとカラーフォトメトリックステレオにも対応
- 位置補正 — ワークの位置ずれ・回転を補正
- 画像処理 — 前処理、二値化、フィルタなどのルールベース処理
- AI判定 — ゼロ学習AI、超微細良品学習AI、領域抽出、物体検出、AI OCR
- 計測 — 寸法・面積・個数
- 外部通信 — PLC通信とDIO。多種多様な外部機器に対応
ここで設計上重要なのは、全モジュールが並列で動作することです。
直列に処理するソフトでは、検査項目を1つ足すとその分だけタクトが伸びます。「精度を上げたいが、タクトに収まらないので諦める」という判断が、現場では頻繁に起きます。並列で動けば、処理を足してもタクトは最も遅いモジュールに引きずられるだけで済みます。数10msの検査に対応できるのはこのためです。
カメラの台数とAIモデルの数にも制限を設けていません。ライセンスの単位で検査の設計が縛られると、本来必要な構成が組めなくなるからです。
アノテーションはAIが肩代わりする
AI外観検査を導入するとき、最も工数がかかるのはアノテーションです。不良画像を集めるところまでは何とかなっても、1枚ずつ欠陥をなぞる作業で止まります。
Inspection Designer では、欠陥を1つ指定すると、AIが画像の中の似た箇所をまとめて拾います。人がやるのは指定と確認で、なぞる作業そのものはAIが行います。かかる時間は人手でアノテーションする場合の5〜10分の1です。
他のアプリケーションで作成済みのアノテーションデータも読み込めます。既に別のソフトで学習データを作ってきた場合、その資産を捨てずに済みます。
なお、ゼロ学習AIを使う場合はこの工程自体が不要です。学習せずに検出を始められるので、まずゼロ学習AIで立ち上げ、精度を詰める段階で学習を足す、という進め方もできます。
学習と評価を同じ画面で回す
アノテーション・学習・評価を1つのモードにまとめています。ソフトウェアを立ち上げ直さずに3つの工程を行き来できるので、サイクルが速く回ります。
それ以上に効くのが、データセットとして保存できることです。
学習をやり直すとき、前回と違うデータで評価してしまうと、精度が上がったのか下がったのかが分かりません。同じデータセットに対する結果を並べて初めて、変更が改善だったかを判断できます。再学習のルールを決めるうえでも、この比較ができるかどうかが分かれ目になります。
どこまでが「簡単」なのか
正直に書くと、ノーコードで省けるのはプログラミングの工数であって、検査の設計ではありません。
何を不良とするか、どの角度から何を照らして撮るか、見逃しと過検出のどちらを優先するか。これらは誰かが決める必要があり、ソフトウェアが代わりに決めることはできません。外観検査の自動化でつまずく原因の多くは、コードではなくこちら側にあります。
Inspection Designer が引き受けるのは、決めたことを形にするまでの工数です。決めるところは一緒に考えます。

